含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉
(源泉名:湯向温泉) pH4.7
鹿児島県熊毛郡屋久島町口永良部島1739−2
男女別内湯
200円(湯向に宿泊している人は無料)
24時間
口永良部島にある4ヵ所の温泉施設で、最後に入ったのがここ、湯向温泉です。
この日はこの温泉のすぐ近くにある民宿で一泊。
ちなみに、湯向と書いて「ゆむぎ」と読みます。
Googleマップで調べると、港から湯向温泉までは約13kmと出ます。
13kmと言われると、あっと言う間につくような気がしてしまいますが、口永良部島の道はコンクリート舗装の山道で、道幅も狭くカーブの連続です。
見通しの良い直線はほとんど無く、出せる場所でも最高速度は40km/hくらい。滅多に来ないけど対向車に気を付けながら走っていると、平均速度で20km/hもありません。
そのため、港からだと、たったの13kmでも45分位かかります。
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湯向集落にはポツンポツンと民家た立ち並び・・・ と言っても、10軒もありません。
その小さな集落の中に、ひっそりと湯小屋が佇んでいました。
入る際、地元のお婆ちゃんと入れ違いました。
ただでさえ人口の少ない口永良部島にある、小さな集落ですので、私達が余所者だという事は一目見て分かるようです。でも、とても穏やかな口調で「良いお湯だからゆっくり入っていってね」と、優しく受け入れて下さいました。
口永良部島に来てから思うんですけど、お話する人みんな優しいんですよね~!
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内部ですが、訪れた時間が夕刻だった事もあり、ちょっと薄暗い感じです。
管理人は不在の料金箱制。ちなみに湯向に宿泊している人は無料で入れます。
事前に民宿に顔を出してから温泉に来たのですが、民宿のご主人に「お金は払わなくて良いからね!」と、何度も念を押されてしまいました。
湯屋は小さな集落からは想像がつかない程に立派です。
太い柱と梁が渡されていて、天井が高くて換気の良い、理想的とも言って良い湯屋です。
そこに、縁が岩で組まれた湯舟がひとつ。
洗い場も十分な数が確保されていて、かなり広いです。
湯向集落に住む人達が一度に全員入りに来たとしても、手狭に感じる事は無さそうですね。
お湯は光の加減か、うっすらと青みがかって見える透明のもの。
表面に白い湯花が浮いていますが、湯底にも湯花が沈殿していて、お湯に浸かると綿雪のようにぱっと舞い上がります。
ちょっと熱めのお湯で、44~45度位はありそうです。
お湯からはしっかり香る強めの硫黄臭。
それに、痕跡程度に少し粘土臭のような混じる感じですが、割とピュアな硫黄泉って感じです。
直前に入った寝待温泉のお湯は、かなり濃くて個性的だったのですが、それと比較すると薄いような印象は否めません。
でも、毎日寝待温泉のお湯に浸かっていたら、体力の消耗が激しすぎる気がするんですよね。
そう考えたら、集落にある温泉としてはこっちの方が良いのかも?
いずれにせよ、良いお湯である事には違いありません。
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無骨なパイプ湯口からは新湯がとめどなく注がれていて、気持ち良く掛け流されています。
利用者が少ないのでしょうね、お湯の鮮度は抜群!
温度が高いので、あまり長湯し過ぎるとヘロヘロになりそうですけど、気持ちが良いから出るに出れなくなってしまうんですよね~!
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ふと窓の外を見ると、お湯の張られていない露天風呂がありました。
女湯側からも同じ露天風呂に繋がっているようです。
以前は混浴の露天風呂があったみたいですね。
本村温泉にも露天風呂がありましたけど、利用者の減少の影響でしょうか・・・?
せっかくあるのに惜しい気もしますけど、露天風呂を準備した所で、一日のうちで何人が利用するのかと考えたら、使われなくなってしまうのも致し方ないのかもしれません。
ふらっと観光に訪れただけの私が言っても、まったくもって無責任な話ですけど、歴史もある湯向温泉と湯向集落です。
このまま廃れる事無く在り続けて欲しいと切に願います。
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参考までに、湯向で私が宿泊した民宿「恵文(えみ)」さんです。
湯向には民宿が2軒のひとつで、もちろんちゃんと予約をして伺ったのですが、看板とか出ていないのでどこだかサッパリ分からない!
迷っていたら建物の前でご主人が手を振っていたので何とか辿り着きましたけど、何だか凄い所でした。
なんと言うかですね、第一印象は「マジか!?」です。
親戚のオジサンの家に来たみたいな感覚。いや、親戚のオジサンでも、人が来ると分かっていたら、もう少し準備とかしていると思うんですよね。
これ、中も外も、本当に宿なの?ってくらい、雑然としています。
離れの棟に案内されて、お好きにどうぞって感じなのですが、とりあえず雨と風を凌ぐ以上の期待は出来そうにない造りです。
8月の鹿児島、しかも南国の離島です。当然のように暑いんですけど、クーラーはありません。扇風機フル稼働でも、暑いものは暑い!
部屋の中にムカデやカナブンがいます。まぁ、そうだよね、こういう建物だもん、虫くらい入って来るよね。
土間を見ると、フナムシが走り回っています。お、おう、マジかよ。これは見なかったことにしよう、きっと気のせいだ・・・
それ以外にも、色々と「何だコリャ!?」を列記すると、まるでこのお宿の悪口みたくなってしまうので、敢えて書きませんけど、まぁ、凄い所です。
でも、じゃあ駄目だったかと言うと、一周まわって、これはこれで素晴らしい宿です!
これ、誉め言葉になるか分かりませんけど、こんな素朴でボロッちくて面白い宿って、私がいままで色々と泊まった中では他にありませんでした。
思わず「ここ本当に日本!?」って言いたくなるような、非日常の世界です。
食事はイシダイとメンチカツ+白米+汁物。家庭料理でももっと品数多い気がします。ぱっと見だと、とっても質素。
でも、なんとこのイシダイ、ご主人が海に潜ってモリでついてきたばかりで、つい1時間前には海で元気に泳いでいたものです。
東京じゃ絶対に食べられない鮮度の良さ。弾力が凄すぎます、身がプリプリ。
質素かと思いきや、実は物凄く贅沢!
更に驚くのは、夕食の際はご主人も一緒です。
最初は、「んんん? 何で一緒に食ってんの!?」って気分になり、少し居心地悪さを感じましたけど、ご主人、当たり前にいるんですよね。
でも、お酒を飲みながら話をしていくうちにどんどん打ち解けていくから面白い。まさに、遠縁の親戚のオジサンの家に来たみたいな感覚。
途中からご主人と娘が五目並べに夢中になり、おかわりのビールが欲しければ冷蔵庫から勝手に取って飲むという謎展開に・・・
でも、ご自由にどうぞと放置されるより、短い時間でもまるで家族のように触れ合い、色々と話が出来た事で、口永良部島の事をより一層理解出来たような気がします。
朝食も何故か一緒に食べて、そろそろ時間だし帰りますね~って感じで、ゆるーい感じのチェックアウト。
帰る時に、宿代はお幾らですかと聞いたら、「1万円」と言われました。
予約の際に、子供分は要らないから大人2人分で1万円とは聞いていてました。その時点で既に滅茶苦茶安いんですけど、食事の際にお酒飲んでいますし、子供達もジュースを頂いています。
ちゃんと追加で取って下さいと伝えたところ、ご主人「俺も楽しかったから要らないよ!」と、それ以上は受け取ってくれませんでした。
大人2人、小学生1人、未就学児1人で、計4人。1泊2食付き、飲み物代込みで、1万円ポッキリ。
えっ? ここ、日本ですよね・・・!?
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人生初の離島湯めぐりで、最後に宿泊した宿は、色んな意味で印象に残るものでした。
「凄い所だった、もう二度と来ない!」って、思ってしまう人は、多分いると思います。
でも、私は、「凄い所だった、もう一度来たい!」って思いました。
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湯向温泉、お湯はもちろん素晴らしかったですけど、それにも増して、民宿のオヤジさんの印象が強すぎました。
ここには必ず再訪したいと思います。
その時は、今回飲んだ分のお礼も兼ねて、お土産って事でビールをケースで持って行きますね。
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2022年 8月17日 - 初訪問・日帰り入浴
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