北海道

金華湯 (小金井沢温泉)

硫黄泉?

北海道島牧郡島牧村
野湯
無料
24時間入れるけど日中で無いと危険

今年の初めに行った、鹿児島の離島、硫黄島にある穴之浜温泉東温泉
ずっと前からの憧れで、特に穴之浜温泉に至っては一生行ける事は無いだろうと思っていましたが、念願叶って行く事が出来ました。
そんな穴之浜温泉と同じくらいに憧れの温泉であり、一生のうちに行ける事は無いだろうと諦めていたのがここ、北海道にある野湯、金華湯(金花湯と書かれる事もある)です。

何故諦めていたかと言うと、通称 日本一到達困難な野湯 とも呼ばれていたからです。
北海道の山の中にある秘湯なのですが、車から降りて徒歩だと約25kmもあるのだそうです。
しかもヒグマの生息地なので、ただ単に遠いだけではなく、危険も隣り合わせなのです。

私の温泉友達で行った事のある人もいましたが、その人は金華湯に行くためにオフロード走行出来るバギーを買って挑んだなんて言っていました。
私にはとてもとても、そもそも北海道自体が遠いのに、わざわざ野湯ひとつの為にバギー買うなんて、そんな予算ありません。

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と言う事で、一生無理だろうと諦めていた金華湯。
今年の7月に伊豆の金谷旅館で温泉仲間と一緒にプチオフミをした際、その中のひとり、野湯が大好きなOさんが「行けるよ~!」なんて、軽いノリで仰いました。
またまた御冗談を・・・ なんて思いきや、なんとOさんはオフロードバイクで金華湯に行った事があるそうです。
そのOさんは趣味でオフロードバイクを複数台所有されており、行くならば貸してくれるとの事。
しかも、ご事情あって全国を転々とされている方なのですが、今は北海道に住まわれているのです。

Oさんが北海道にいるこのタイミングを逃すと、金華湯には一生入る事が出来ません!

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と言うわけで、ついこの間、お盆で函館湯めぐりをしたのも束の間、再び北海道に戻って参りました。
函館は紅鮭や子供達も一緒でしたが、今回は私単独での北海道上陸。バイクで大洗からの苫小牧までのフェリーに乗っての船旅でした。
これについても色々と書きたいのですが、細かい事はバイク備忘録(最近サボっていて全く更新していない)にて・・・

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北海道に到着したらOさんの家に寄り、バイク2台をOさんのハイエースに積み込み、いざ出発。
まずは金華湯からも割と近い二股らぢうむ温泉で一泊。早朝5時過ぎにチェックアウトし、金華湯を目指しました。
9月になったばかりとは言え、北海道の早朝は涼しいを通り越し寒い位です。

日の出と共に朝霧が晴れて行く様子が、何だか、北海道に来ているなぁ~!って感じです。

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車で行ける所までは車で行きます。
途中から山道に入り、いやが上にもテンションが上がります。

間もなく金華湯の入口に到着って所で、前方に黒い影を発見。
なんと、ヒグマの親子でした!

子連れの熊は狂暴だと聞いています。
これが徒歩だったら青ざめる瞬間ですが、車の中なので安全。
母熊は最初立ち上がって威嚇もしてきましたが、流石に車には敵わないと思ったのでしょうね。時折振り返って子熊の事を気づかいながら、一目散に逃げていきます。

金華湯はヒグマの生息地だと聞いていていましたが、まさかこんなに早く遭遇してしまうとは思いませんでした。

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車で行ける最奥部までついたら、早速支度です。
今回お借りしたのは、プレスカブをオフロード仕様に改造したものだそうです。
タイヤやサスペンションはもちろん、エンジンやマフラー、ハンドル、ミッションなど、何もかもが交換されています。
と言うかコレ、純正のまま残っているのって、車体のフレームとタイヤホイール位なのでは?
まさに魔改造!(笑)

ヒグマ対策も用意してきました。
道中はバイクのエンジン音で存在アピール出来ますが、入浴中はエンジン切りますからね。
そんな時にこちらの存在を知らせるのが、玩具の火薬鉄砲。
熊よけには爆竹が定番ですが、いちいちライターで火を付けたりが面倒です。
その点このオモチャ鉄砲は引き金引くだけで結構大きな音を立ててくれます。
これ、私が子供の頃は普通におもちゃ屋で買えたんですよね。とっても懐かしいです。
いま街中でこんなの鳴らしたら、速攻で通報されそうです。

あともうひとつは、ヒグマ対応の熊よけスプレーです。
要は催涙スプレーで、物凄く強烈な奴ですね。
いざヒグマに遭遇して襲われた時用です。
某Amaz●nで購入したのですが、1万円弱もしてちょっと高かったです。
でも、万が一の時に命を助けてくれると思えば、決して無駄な出費ではありません。

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一通り準備を済ませたらいざ出発!
バイクでオフロードを走るなんて、初めての経験です。
慣れないデコボコ道を無理せずゆっくりと進みます。

この日の天候は晴れ。
でも、前日までが大雨だったせいもあり、路面の状態はかなり悪くて、ぬかるみも多いですし、岩や草もツルツル滑ります。
路面だけでなく、濡れて重くなった草も厄介です。道を塞ぐように垂れ下がっていて、それをかき分けながら走行となりました。
あっと言う間に全身がずぶ濡れです。

こんな道をジムニーで走る強者もいるとかいないとか・・・

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ひたすら砂利道をはしっていたら、途中で落石発見。
割と最近落ちて来た岩のようです。
ネットで事前に存在を知っていましたが、なかなかの大きさです。
流石のジムニーもこれは超えられない、かも!?

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なお、ここで白状しますが、道中で何度もコケました。
ひとから借りたバイクをひっくり返すとか、トンデモナイ話です!
でも、Oさんは後ろで「大丈夫~?」と心配してくれ、「ひっくり返すのが当たり前のバイクだから気にしないで良いよ」なんてケタケタと笑っていました。
申し訳ないやら、有難いやら、なんとお礼すれば良いのでしょう・・・

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落石を抜け更に走ると、通称「バカ殿岩」と呼ばれる岩が見えてきます。
なんでも、志村けんのバカ殿みたく見えるから命名されたのだとか。

う~ん、バカ殿に見えるかなぁ?

そこから更に進むと沢が見えてきますが、これが小金井沢。
この沢の上流に金華湯があります。

バイクでこの沢を渡りました。
オフロードが初めてなら、沢を渡るのも勿論初めての経験です。
何とか無事に渡る事が出来て一安心!

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ここまで来れば、あとはもうひといき!

↓ その際の動画、前を走るのが私です。(撮影はOさん)

入口を出発してから、およそ2時間弱。
突然開けた場所に出ました。

ここが今回の目的地、金華湯です。
やっと到着出来ました!

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ずっと藪漕ぎのような道を走り、ぬかるみと砂利で滑る路面と格闘し、全身ずぶ濡れです。
頑張って前に進む事に必死で、地面ばかり見ていましたので、久しぶりに空を見上げました。
あぁ、今日って、良い天気だったんですね?

温泉成分のせいかも知れませんが、この一角だけ不思議と木が生えていない、何とも不思議な空間。
そんな所に、ポツンと、青白く輝く湯舟。

美しいの一言に尽きます!

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誰が置いて行ったのか知りませんが、「金華湯」と書かれたプレートがありました。

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余談ですが、この日は同じ島牧村にある「高田旅館」と言うお宿に泊まり、夕食時に女将さんや叔父さんを交えてお酒を飲みながら、色々とお話をしたのですが、地元の方がここを金華湯と呼ぶ事は無いそうです。
「あぁ、あそこ、昔からあるよなぁ、前は道が良くて何度も行ったよ」「あれ、なんだっけ、小金沢温泉? 黄金温泉だっけか? 誰が金華湯なんて言い出したんだろうなぁ~?」なんて、叔父さんが仰っていました。

なので、当ホームページでは、広義の温泉地名として「小金井沢温泉」、この湯舟の事を「金華湯」として紹介しておきます。

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湯舟は2箇所あります。
上段の湯舟は広々としていて、5~6人位ならば一度に入っても余裕がありそうな広さ。
下段の湯舟は、その上段のお湯のオーバーフローが注がれる形で、お一人様サイズです。

まずは上段のお湯から。
温度はほぼ適温で41度です。
たまには誰かが来るとは言え、基本的に誰も管理していない野湯です。
それなのにバッチリの適温、まるで奇跡です!

お湯からは甘い硫黄臭と、他にも複雑な成分臭が混じります。
青白濁のお湯で、透明度は低く、湯底がどうなっているかは見えません。
所々に白湯花と、野湯にはつきものですが、緑色の苔みたいなのが浮遊していますが、野湯とは思えない程に状態が良いです。
まるで、この日私達が入りに来るのを知って、誰かが手入れをしてくれた後のようです。
野湯にありがちな「汚さ」は一切感じません。

ここまで来る道のりは大変でした。
バイクで車での道のりは勿論ですけど、フェリーに揺られて北海道に渡るのも時間が掛かりましたし、もっと遡れば、北海道に来る為の計画や準備だって簡単ではありませんでした。

そんな、色々な道のりを経て、やっと入る事が出来た金華湯。
全く同じものが旅館の露天風呂であったとしたら、また感じ方は違ったであろう事は事実です。

でも、仮にそれらの「スパイス」を一切抜きにして、お湯だけで評価をしたとしても、かなりハイレベルな温泉です。

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続いて、下段にある小さな湯舟。

湯舟と呼んで良いのか、お湯が溜まっている窪みと言った方が正しいのか、とにかく小さいです。
しかも、足を踏み外したら崖下に転落してしまう一歩手前、なかなかスリリングな所にあります。
勿論ですけど、手すりとかは一切ありません!

ここのお湯は38度位でしょうか。上段のお湯のオーバーフローなので温度は低いです。
鮮度と言う話をしたら、当然ですけど、上段のお湯より数段劣ります。
かなり小さいので、肩まで浸かる事は出来ません。
せいぜい腰の上くらいまでしか体を沈める事が出来ず、寝湯みたいな形で入る事になります。

でも、この下段の湯、これはこれで、物凄く気持ちが良いんですよね!

程よく崖の上にあるので、大自然の中で宙に浮いているような形となり、この上無い気分でお湯に浸かる事が出来ます。
体の力を抜いて湯舟に身を預けていると、オフロードでの疲れがゆっくりとほぐれていきます。

お湯からほんのりと香る硫黄臭も堪らないです!

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金華湯、良い温泉だと分かって来ていましたけど、私が想像していた以上に良かったです!

わざわざ、このお湯に入る為に北海道に来た甲斐がありました!

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ちなみに、誰が言ったか知りませんが、日本一到達困難な野湯と言う触れ込み。
ん~・・・、まぁ、私は野湯を極めていませんので、判断出来る立場にはありませんけど、実際のところどうなんでしょうね?
ツール(バイクなど)があれば、私なんかでも辿り着けてしまいましたので、ここが日本一?って気がしないでもありません。
もっと難易度が高い所があるんじゃないの?と言うのが、正直なトコロ。

でもまぁ、日本一かどうかはさておいて、簡単には来れない温泉である事には間違いありません。
もう一度来るかと言われたら、恐らくもう無いでしょうね。

金華湯で、ゆっくりと2時間程滞在。
充分満足したはずなのですが、帰る時は後ろ髪を引かれる思いでした。

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改めて、何から何までお世話をしてくれたOさんに心の底から感謝です!
お陰様で、こんな所は無理だと諦めていた秘湯に入る事が出来ました。
温泉も素晴らしかったですが、北海道の山奥をオフロードで走るという、なかなか出来ない体験も出来ました。

何度お礼を言ってもまるで足りないのですが、本当にありがとうございました。

何度コケても最後まで元気に走ってくれた魔改造カブ君にも感謝!
君のお陰でこんなトンデモナイ山の中の温泉に浸かる事が出来ましたヨ!
プレスカブだけに新聞配達をしていたのかどうかは知りませんけど、どこにでもいる普通のカブだった君だって、まさかこんな所に来る事になるとは思っていなかったでしょうね。
本当ににお疲れ様でした!

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最後にひとこと。

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金華湯、入ってやったぜ!

いええええぇぇぇぇぇ~~~~~い!!!!!

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2023年 9月2日 - 初訪問・日帰り入浴

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