鹿児島県

寝待温泉 (寝待温泉) ★5.0

含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉
(源泉名:寝待温泉) ph3.0

鹿児島県熊毛郡屋久島町口永良部島1714−28
混浴内湯
寸志 200円以上
自己責任にて、24時間入浴可(但し、悪天候時等は立ち入り禁止)

口永良部島に4ヵ所ある温泉の中で、特に入りたいと思っていた温泉がこちら、寝待温泉です。
私は離島の温泉には縁が無いと思っていたので、あまりアンテナを張り巡らせていなかったのですが、そんな私でも寝待温泉の事は少しだけ知っていました。
なんでも、泉質が飛びぬけて良いのだとか・・・

直前に立ち寄った本村温泉から、直線距離だけで言えば結構近い場所にありますが、たどり着く為には車一台すれ違うのがやっとのような山道を走る必要があります。
口永良部島の道って、とにかく狭いうえに、這うようにカーブが続くので、平均時速にすると30km/hも出ません。
「いつまでこんな細い道を走らなきゃならないんだろう・・・?」と、不安になってきたあたりで、「寝待温泉」の看板を発見。しばらくすると、寝待のシンボル?とも言える、立神岩が見えてきました。

なかなか立派な巨岩で、見応えがあります。
この手の岩って、日本全国の海岸至る所にあるんですけど、なかなか来ることの出来ない口永良部島で、寝待温泉のすぐ傍にあるってだけで、何だかとっても有難く思えてくるから不思議です。

そのまま車を進めていくと行き止まりに着くので、車を停め、その先は徒歩になります。
歩きはじめてすぐの所に廃屋が並んでいました。以前は湯治客が格安で泊る宿舎だったそうですが、火山活動や土砂崩れなどで危険って事になり、いまでは利用されていません。
人がいなくなった代わりと言ったらなんですけど、その集落を守るように鹿4匹いました。

私達が近付いても逃げる様子が無く、つかず離れずの距離でこちらの様子を伺っています。
そんな鹿を横目に、足場の悪い道を歩いていくと、念願の寝待温泉に到着。
車を停めた箇所から5分と掛からない場所にあります。

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ちなみにこの寝待温泉ですが、屋久島町のホームページでは「現在ご利用になれません」と書かれています。
と言うのも、土砂崩れの影響で、湯小屋の半分が埋もれてしまっていてしまっていて、危険な状態なんですよね。
ぱっと見ると、小屋が半地下みたいになっていて、あまり違和感を感じませんが、元々はこんな造りでは無くて、ちゃんと小屋になっていたようです。

ただし、あくまで自己責任と言う事で入る事は出来ます。
実際、入れ違いで私以外にも地元の方が数名入りに来られていました。

なお、自己責任と書きましたが、「大雨洪水警報」や「土砂災害情報」が出ている場合や、台風が接近している場合は、自己責任ではなく「使用禁止」となります。
事故が起きたら、完全に閉鎖されてしまう可能性がある施設ですので、利用者のモラルが問われます。

本来であれば男女別で浴室があるのですが、土砂崩れの影響か、現在利用出来るのはその片方だけで、実質混浴の温泉です。
脱衣所は、一応手入れはされているようですが、ちょっと不気味。照明が無くて外の明かりだけが頼りなので、妙に薄暗く感じるんですよね。
女性一人でここに入るのは少し勇気がいるかも・・・?

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浴室は脱衣所から階段を降りた先にあります。
この階段を降りるアプローチ、私は大好きなんですよね!

ぱっと見ると2槽に分かれているように見える湯舟ですが、真ん中の板は橋のように架けられているだけで、実際はひとつの大きな湯舟です。
その湯舟に張られたお湯は、薄暗い光の加減もあると思うのですが、青白く濁っていて、とても神秘的!
辛うじて見える湯底には大き目の岩がゴロゴロと敷き詰められていました。

で、肝心のお湯。
浴室入った瞬間から感じる力強い硫黄臭ですが、直接お湯の臭いを嗅ぐと、もっと強烈です。
硫黄以外にも複雑な成分臭がして、硫黄臭に混じって土類臭や粘土臭のような匂いが混じっている感じです。
今まで入った事のある温泉でどれが似ているかと言われたら、どれにも似ていません。敢えて言うならば、かつてあった津軽湯ノ沢の名湯、なりやのお湯を髣髴とさせるものがあります。

湯口は無骨なパイプ湯口で、ここから素手で触るには熱いお湯が少量ずつ注がれています。
口に含むとハッキリと分かる酸味に加えて、強めの塩味。それに硫黄の苦みが加わって、これまた不思議な味がします。
ここまで力強いお湯は全国的にも少し珍しいです。

鮮度については、湯底に湯花が沈殿しているくらいですので、あまり良さそうではありません。
ただ、お湯が不潔って印象は全くありません。利用者が少ない影響かな?
湯底に沈んだ湯花が舞いあがると、お湯がより一層濃くなったような気になります。
加えて、浴槽内のお湯の温度は45~46度位で、けっこう熱いです。

あまり換気されず湯気蒸す室内、塩分も含む濃い泉質で、そのうえ高温のお湯。
更に付け加えると、8月の南国、鹿児島の離島です。何もしないでいても、汗ばむ季節。
湯舟に体を沈めたが最後、汗がどっと噴き出して止まらなくなります。

せっかく来たので、何度か出入りしたり、掛け湯したりして、お湯を楽しみましたけど、かなり体力を消耗します。
私は温泉が大好きなので良いですけど、普通の人にとったら、これは苦行でしかありません。
正直なところ、快適とは程遠い入浴です。

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それでも私の評価的には文句無しの★5つです。

これほどまでに珍しいお湯って、全国で探してもなかなかありません。
良いお湯だと言うのは、事前にある程度知っていましたが、こんなに凄いお湯だとは思ってもみませんでした。
ハッキリと断言出来ますが、このお湯に入るためだけに、はるばる離島の口永良部島に来る価値があります。

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帰り際、汗だくになりながら来た道を戻ると、さっきいた鹿がまだいました。
宿泊した民宿のご主人曰く、餌をくれる人の事を待っているのだとか。
名湯の効能は実際お湯に浸かる人間だけでなく、そこを訪れる人間からおこぼれを貰う鹿にもあるようですね。

鹿たちに見送られ、少しだけ後ろ髪を引かれながらこの場を後に。
きっとまた再訪します。

でも、次に来る時は、真夏だけは避けたいと思います。
極上の激熱温泉、特濃の硫黄泉を時間かけてじっくり楽しみたいので、寒い時期に入りたいです。
ベストコンディションで入るためにも、今から次の計画を立てなければ! ・・・と言う一湯です。

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2022年 8月17日 - 初訪問・日帰り入浴

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