神奈川県

元湯 環翠楼 (箱根塔ノ沢温泉) ★4.5

アルカリ性単純温泉
(源泉名:塔ノ沢温泉 台帳番号 湯元第37、50、110号混合)
48.2度 / pH8.9 / H16.12.13
Na+ = 144 / K+ = 1.5 / Ca++ = 22.8 / Mg+ = 0.05
Cl- = 126 / HCO3- = 30.5 / SO4- = 131 / CO- = 1.85
NO3- = 1.75 / HSiO3- = 8.06 / BO2- = 2.36
H2SiO3 = 51.5 / HBO2 = 4.83

神奈川県足柄下郡箱根町塔之沢88
0460-85-5511
男女別内湯・露天風呂・貸切風呂
日帰り入浴のみ不可

箱根温泉の開湯は天平8年(西暦736年)と言われています。
東京の奥座敷としても知られ、とても歴史のある温泉地なのですが、その中でも幾つか気になるお宿があります。
その中のひとつがこちら、「元湯 環翠楼」さんです。

とても歴史のある温泉旅館なのですが、その歴史を一言で言うと、

トンデモナイ!!!

のです。

水戸黄門こと水戸光圀公が明朝の使者と一緒に宿泊した記録が残る
・ 公武合体の象徴とされる皇女和宮様の定宿で、ここ環翠楼で息を引き取られた
・ 将軍家御台所の天璋院篤姫様も訪れ、和宮様を偲んで号泣された
・ 初代総理大臣の伊藤博文の定宿で、現在の屋号である環翠楼は伊藤博文が名付け親
・ 中国建国の父である孫文が亡命中に環翠楼を定宿としていた
夏目漱石島崎藤村幸田露伴など多くの文人も逗留した事でも有名

とまあ、「ちょっと、話を盛りすぎじゃないの!?」と言いたくなる程に凄いお宿なのです。
しかもそれがすべて事実だと言うから更にビックリ!

箱根湯本から国道1号線を走り、函嶺洞門を抜けたすぐの所にところにあります。箱根に来るたびに目の前を通る事になるので、ずっと気になっていました。

でも、そんな歴史あるお宿なので、当然 お高い! のですよね。
私の感覚だと、1泊2食付きで7000円が平均的な宿泊代金。8000円で「ちょっとお高い」、1万円を超えたらもう「高級旅館」なのです。
で、この環翠楼がお幾らかと言うと、お部屋や時期にもよって違いますけど、一番安く泊まっても2万円くらいです。

一晩過ごすだけで2万円ですよ、2万円!!!

残念ですが私、そんな大金が入る鞄を持っていないんですよね~!

と言う訳で、まあ一生縁は無いだろうと思っていました。

とはいえ、ずっと気にはなっていたんですよね。
そんな折、紅鮭のお腹に子供が宿りました。
順調に膨らんでいく紅鮭のお腹。出産まであとひと月って頃にふとここ、環翠楼を思い出したんですね。

子供が生まれたらしばらくは温泉にも入れなくなるし、こんな機会でも無ければ二度と来れないだろうと思い、清水の舞台から飛び降りるつもりで宿泊を決めました。
折角だから贅沢しようと、内風呂つきの部屋を選択。お一人様3万円くらい。
全財産を引き出しても足りず、親戚中に頭を下げ借りたのは言うまでもありません。

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さて、そんなこんなで宿泊する事となった環翠楼。
いつも走っている国道1号線がレッドカーペットのように見えました。

こうして改めてみると、樹々に囲まれていて荘厳な雰囲気です。
「庶民なんかに宿の全景を見せてたまるか!」
と言わんばかりの格式の高さを伺えます。

初めて足を踏み入れた内部。
新しく建てられた宿では絶対に真似の出来ない風格があります。
当時と全く同じでは無いのでしょうが、歴史上の人物達も同じ空間を歩いたと思うと、感慨深いものがあります。

通されたお部屋は宿の正面玄関のあるフロアから一階層降りた所にある「あじさい」の間です。
予算が足りなくて地下室に通された!?
いえいえ、斜面を利用して建てられた旅館なので玄関が2階にあり、このお部屋の階層は1階になります。

次の間と8畳の本間、広縁があります。
それほど広くは無いんですけどね、息を飲むほどに良いお部屋 です。

ぱっと目を引く 羽化登仙 の書、さっぱり意味が分かりません。どんな格言だろうと思って調べたら「酒に酔って気分が良くなること」だそうです。
肩の力がふっと抜ける良い言葉ですね!

質素倹約なんて書かれていたら泣きながら飛び出しているところでした。

あじさいの間には部屋付きの内風呂があります。
ちょっと手狭ですが、2人で入るには十分な広さ。
内風呂ですが大きな窓越しに光が差し込み、閉塞感は全く感じません。まるで露天風呂のよう。
目の前は遊歩道になっているため竹で目隠しされているので、眼前を流れる早川を眺めながらの入浴は出来ません。
ちなみにこの遊歩道は環翠楼の敷地内なので一般人が通る事はありませんけどね。

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到着して早速したのは、館内の散策。

なんと言えば良いのでしょうね、
360度どこを見渡しても素晴らしい です。

古い建物なので、それなりに痛んでいる箇所もありますが、それらも含めて全てが良い風情を醸し出しています。

私が特に好きなのがこの洗面所。
向かい合わせに張られた鏡で広く感じる空間に、凝った天井と床。それだけでも息を飲むのですが、何よりも特徴的なのは左右に並ぶ洗面台。

独立した洗面台が胸を張って「どうぞ、お一人様ずつお使い下さい」と言っているようです。

今でこそ洗面台くらいは各部屋にあって当たり前なのですが、この宿が完成した当時は共同洗面所が当たり前だったのでしょうね。それ故に、たかだか洗面所でも、一部も隙の無い贅沢な造りです。
今からこれと同じ物が新しく造られる事は無いでしょうね。

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館内には大広間が3箇所あり、見学をすることが出来ます。

そのいずれも見事な造り!
私は昔の建物についてあまり詳しくありませんけど、見上げた天井が只物で無い事くらいは分かります。
なんというかですね、品があると言うか格が違うと言うか、語彙力が無いので同じ言葉の繰り返しになりますが、見事 なのです!

温泉を抜きに、館内を散策するだけでも満足出来そうです。

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勿論、温泉だって 見事 です!
部屋付きのお風呂とは別に、男女別の大浴場と、男女別の露天風呂、貸切風呂があります。

まずは男性用の大浴場。

入って最初に目に飛び込んでくるのは岩壁と、凝ったタイル張りの床。
この大浴場に使われているタイルは、大正時代に輸入したものだそうです。
ゆえに、この大浴場の名前は 大正風呂 なのだとか。

少し変色しているタイルが大正時代から刻んできた宿の歴史を物語っています。
なんでもかんでも新しければ良いって訳でもないんですよね。古い物には古い物にしか無い良さがあります。

私ごとき平民がこのお風呂に浸かっても良いのでしょうか・・・?

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女湯も見学させて貰いました。
正直言って、男湯よりも良い!!!

浴槽は男湯と同じ、丸湯舟と扇湯舟のふたつ。
でも、浴室入った瞬間目に飛び込んでくる丸湯舟や、少し広めの浴室、柱の使い方、洗い場と湯舟それぞれで異なるタイルパターンなど、男湯には無い造り込みがあります。

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離れには男女別の露天風呂があります。
大浴場とは直接つながっていないので、行き来する際は一度服を着る必要があります。

男湯は 翠雲の湯 と名付けられており、眼下に早川を望む事ができます。
解放感はそこそこですが、樹々に囲まれており気持ちが良いお風呂です。

静寛の湯 と名付けられた女湯。
屋根が掛かっている半露天スタイル。

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最後にもうひとつ、空いていればいつでも入る事が出来る貸切風呂もあります。
これはこれで素敵なお風呂ですが、気合入った造りをしている大浴場や露天の後で見ると少し素朴な気がしますね。

個人的には、肩肘張らずに入れる 見慣れた感じ のお風呂で、結構好きです。

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勿論、部屋付きのお風呂も含めて、全部入りました!
全財産はたいて来たんですからね! 入りそびれたら一生涯後悔しますので!

成分だけで見ると、あまり特徴の無いアルカリ性単純温泉です。アルカリ性で少しツルツルする肌触りこそあれ、無色透明で臭いも無いお湯です。
でも、その何て事の無い澄んで綺麗なお湯が最高に気持ちが良いんですよね。

一番好きだったのは大正風呂です。
大正風呂が源泉から一番近い場所にあるそうです。ただ、違いと言う程のものは感じませんでした。
気持ちが良いお湯であった事には間違いありませんが、それ以上に、環翠楼の歴史が刻まれた圧倒的な風情にやられました!

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なお、食事は朝夕ともに部屋出し。
でもその際に使っていた別のカメラのデータがそっくりそのまま消えてしまったので、写真が残っていないのです・・・
文字だけのレポートになってしまうので、割愛します。

とても贅沢で、美味しくて、中居さんも付かず離れずの素晴らしい接客で、大満足だったのですけどね・・・

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それにしても、この環翠楼ほど天井を見上げる事の多い宿は珍しいかも知れませんね。
下の写真は宿泊したあじさいの間の照明ですけど、これ一つとっても凝った造りをしているのが分かりますよね?

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たった一晩でしたが、歴史あるこのお宿に滞在する事が出来て本当に良かったです。
私が次に来れるとしたら、宝くじが当たった時か銀行強盗して成功した時になりそうですが、是非ともまた訪れたい素晴らしいお宿でした。

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2013年 8月1日 ー 初訪問・宿泊

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