大分県湯布院温泉

下ん湯 (由布院温泉) ★4.0

単純温泉
(源泉名 : 岳本温泉)

大分県由布市湯布院町
混浴内湯 & 露天風呂
200円
9:00 – 23:00

由布院と言えば金鱗湖が有名だそうです。へ~、へ~、へぇ~・・・

温泉にしか興味が無い私には、どこにお土産通りがあって、どこが観光名所かなど、あまり気にした事も無いので、有名と言われても全くピンと来ません。
むしろ、「由布院で有名と言えば、荒木共同浴場じゃないの?」と言いたくなるくらいに、世間のピントからはズレています。

で、そんな私が、ゆのつぼ温泉から出て、次の目的地としてセットしたのが、その有名だと言う金鱗湖です。
なぁんだ、やっぱり観光?いえいえ、目指す場所は、その金鱗湖の湖畔にあると言う、「下ん湯」と言う共同浴場です。
具体的な場所は分からないのですが、この下ん湯も観光名所のひとつなのだそうで、金鱗湖を目指せば辿り着けるだろうという魂胆です。
ゆのつぼ温泉から金鱗湖までは、車で5分と掛からず、歩いても軽い運動程度の場所にありました。

そうして辿り着いた金鱗湖。私の思惑通り、下ん湯は簡単に見つけることが出来ました。
ただ、下ん湯よりも先に、気になる事が・・・
それは、下ん湯の真向かいにある、ジモ専共同浴場の存在です。
普通ジモ専って人目につかない所にヒッソリとありそうな物ですが、通り沿いに建っており、気付かない方がおかしいくらいに堂々としています。
対する下ん湯はと言うと、通りから少し金鱗湖畔に下りた所にある為、むしろ下ん湯の方が目立たないくらいです。
しかも、そのジモ専、1つではなく2つ並んでいるのだから、更に驚きです。
当然ながら、ジモ専ですので、外来入浴は禁止されています。入り口にでかでかと張り紙がされていますので、交渉してみようと言う気にもならず・・・
折りしも夕刻。浴室内からは、湯浴みをする地元の方の声が、高らかに響いていました。

さて、そんなジモ専を横目に、下ん湯。金鱗湖を目の前にする立地条件の良い場所にあります。茅葺屋根の湯小屋は、風情抜群でなんとも言えない良い雰囲気です。
ただ、ひとつ心配事が。それは、事前で確認した限りでは、観光客が非常に多い所で、見物客がひっきりなしに中を覗くのだとか。そのうえ、男女混浴です。女性の入浴はまず無理と
言うレポートが大半を占めています。
そんな訳で、こりゃ紅鮭は無理だろうと最初から諦めていた私。
紅鮭に「すぐ出るから、そのへんで待っていてね」と言い残し、中を覗くと・・・

見物する観光客はおろか、唯の1人の先客もおらず、ガラ~ンとしています。
慌てて「今がチャンスだ!」と紅鮭を呼び、一緒に入浴する事になりました。ラッキーです。
ちなみに入浴代は200円。湯小屋の外に料金箱があります。勿論、私と紅鮭2人分支払いました。

さて、そのお風呂。脱衣所と浴室は一体型です。浴室中央に湯船、それを挟むように、両側に脱衣所があります。
外観がとても渋い造りでしたので期待していましたが、その期待を裏切らない、とても風情の良い造りです。
天井の梁も見事で、思わず口をあんぐりと開けて見上げてしまいます。

少し面白いと感じたのが、縦にふたつ並んだ湯船です。
手前の四角い湯船は、完全に屋根に掛かっており、内湯と呼んで差し支えの無い物なのですが、奥にある湯船は、半分屋根の外に出ており、半露天風呂のようになっています。
露天部分と内湯を遮る壁のような物はありません。

露天からは勿論、内湯からも金鱗湖を眺める事が出来るので、なかなか開放的です。
全体的な印象はレトロな共同浴場ですが、造りこみは、現代風なアレンジが加わっているとでも言いましょうか、とても良い感じです。
同時に、こんな造り、南国大分だから出来るんですよね。これが東北や北海道だったら、冬場は寒すぎて使い物にならない事でしょう。

肝心のお湯は、無色透明の物です。湯口からは熱いお湯がザブザブと注がれており、素手で触ると火傷しそうです。温度調整の為の加水もザブザブと同時にされていました。

まずは手前の湯船。掛け湯をすると、肌がビリビリと刺すような熱い刺激を感じます。
でも、湯船に浸かると、思った程には熱くなく、意外と平気。
成分表には単純温泉とありますが、特徴は典型的な芒硝泉です。
体感45度、実際は43度といった所でしょうか。

臭いもまさに芒硝泉で、心地よい薬系芒硝臭を感じる事が出来ます。この日は単純泉や塩化物系に近いお湯が多かったので、この感触は堪らなく気持ちが良いです。
お湯から上がるとさっと乾き、体の表面が冷えるのも、芒硝泉ならではです。
外気を取り込みやすい開放的な造りも手伝って、湯船からあがると、すぐにお湯が恋しくなります。自然、出たり入ったりが忙しなくなるのですが、それはそれで幸せなひと時です。

続いて半露天になっている奥の湯船。こちらのお湯は温めで、41度くらいです。加水割合が多いのか、単なる劣化か、浴感は手前の湯船には遠く及びません。
それでもお湯からは芒硝臭がはっきりと漂います。若干ですが、芒硝臭以外の、硫黄崩れみたいな臭いも混じります。
でもまあ、手前と比較してしまうからいけない訳で、良いお湯である事には違いありません。
少し藪に遮られてはいますが、金鱗湖を眺める事が出来るので、なかなか風情が良いです。
長湯をしたければこの露天も悪くありません。個人的にはすぐに手前に戻りましたが、好みの温度で住み分けが出来るので、これはこれで、有難い湯船です。

観光客がひっきりなしで落ち着かない場所だとばかり思っていましたが、ここにいるのは、私と紅鮭だけです。風情が良い上に、お湯まで良い。
来る前までは、「どうせ観光客の見世物になっている湯小屋だし、駄目そうならば入らなくても良いや」くらいに思っていましたが、こうして贅沢な入り方をしてみると、その素晴らしさが五感を通して伝わって来ます。
由布院で幾つか共同浴場に入りましたが、個人的には、ここが一番印象良かったです。

ただ、矢張り女性の入浴難易度は高そうです。
ちょうど紅鮭が湯船から上がり、着替えをしていたら、男性客が入ってきました。当然その方、悪気がある訳では無く、当然の事として入ってきているので文句も言えませんが、私にとっては、贅沢な貸切時間の終了を告げる、残念な瞬間です。

お湯に未練を残していた私は、紅鮭に「あと5分入ってから上がるから待っていて」と伝え、湯浴みを楽しんでいると、その後も男性客がやって来て・・・
結局私が上がる頃には、私以外に3人の人が利用していました。
観光客は宿で夕食を食べているであろう時間帯ですら、これです。となると、日中の繁盛振りは想像に易く・・・
私たちにとっては、本当にラッキーなタイミングで入浴が出来たとしか言いようありません。

風情が損なわれる事は避けたいですが、この素晴らしいお湯を女性も楽しめるようにして欲しいなぁ~・・・
そんな事を願いながら、その場を後にしました。
私にとってはとても良い思い出になりましたが、オススメするには色々と条件がついてしまいそうな一湯でです。

2010-4/29

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