島根県

共同浴場 薬師湯 (温泉津温泉) ★4.0

ナトリウム-塩化物温泉

成分表未確認

島根県邇摩郡温泉津町温泉津口7-1
0855-65-4126
男女別内湯
300円
5:00 – 21:00

薬師湯は温泉津温泉に3箇所ある共同浴場のひとつです。温泉津温泉は石見銀山が世界遺産に登録された事により、とても注目されるようになりました。
世界遺産になる前から気になっていた所でしたが、山陰と言う遠い場所の為、ずっと行く事が出来ませんでした。

今回、やっと山陰に行く機会が訪れ、念願叶って温泉津へも寄る事が出来る訳ですが、問題点がひとつ。世界遺産になった為、観光客の数が増大し、温泉津温泉は連日大混雑なのだそうです。
そういえば最近はテレビで温泉津の共同浴場が紹介されるなんて事も珍しくありません。
世界遺産後に温泉津を訪れた友人の話では、風呂に入るため観光客が行列を作っていて、中に入ったら芋洗い状態だったのだとか。

うーん、折角の温泉津温泉。でも、行列して芋洗いのお風呂に入っても、印象が良い筈がありません。どうしようか・・・
そこで思いついたのが、朝の早い時間に入ることです。調べてみたところ、温泉津の共同浴場は朝5時にオープンだそうです。早いなぁ!
でも、もう次が無いかも知れない山陰地方での湯巡りですので、後悔はしたくありません!決死の覚悟で早起きをする事にしました。

さて、湯巡り当日。前日の投宿先は、出雲の駅近くです。ここから温泉津までは50km以上あります。と、言う事で、気象は朝の3時30分。
明け方ですらなく、まだ夜中です。当然誰もが寝静まっている中、出発しました。真っ暗闇の国道9号線をひた走り、途中信号は殆ど無く、交通量も皆無に近い状態でしたので、アッと言う間に温泉津に到着。
時計を見ると、予定通りに、5時少し前です。
まだ辺りは真っ暗ですが、街頭に照らされた温泉街の町並みはテレビなんかで散々見た通り。
あぁ、憧れの温泉津温泉。一番風呂に入るぞと思い、徐行をしながら共同浴場を探していると、行く手に桶を持ったお婆ちゃんが歩いています。何だか嫌な予感・・・

目指す共同浴場の薬師湯にたどり着いた時には、その嫌な予感が的中してしまいました。
なんと、既に、お客さん一杯なのです。4台分ある駐車スペースは残す所1台分となり、ギリギリセーフ。私が駐車している傍から、どんどんお客さんが入っていきます。
中には、「中にタオルはありますか?あ、買わなきゃ駄目なんですね?じゃあお願いします。」なんてやり取りをしている、明らかに観光客な人までいます。オイオイ、まだ朝の5時ですよ!?

浴室に入ると、何と、既に芋洗い状態。写真に撮れないのが残念ですが、私含めて、ざっと、14人います。湯船は小判型で、ぎゅうぎゅうに詰めても、8人程度しか入れません。
大半は浴槽の縁に座って、順番を待っている格好。うぅーん、世界遺産効果なのでしょうか?恐るべし。

で、とりあえずお湯の印象。土類系のお湯って感じで、金気臭がします。お湯の感触はペタペタで、ズシリと重い、力強いものです。黄土色に濁っており、なんとなく、青森の白馬竜神のお湯を思い出します。
なんと言っても、浴室の雰囲気が良いです。湯船は析出物でコテコテに鍛えられており、ナマズの湯口が重厚感にワンポイントのアクセントを添えています。
人数の割にはお湯の鮮度が良いです。やっぱり、朝一番だからかな。

ただ、それにしても、ホントに、人が多い。幾ら掛け流しとは言えども、この人数が出たり入ったりする訳ですから、供給がまるで追いついていません。
人が同時に沢山入っているうちはまだ良いですけど、2~3人しか入っていない状態だと、湯面が湯船の縁から10センチ近く低い所まで下がってしまいます。
オーバーフローしてしまったのもあるでしょうが、それ以外にも、掛け湯でお湯を掬うもんだから、湯口からの供給が追いついていません。
ザバーっと気持ちよく溢れさせる事が出来るのは、朝一番最初に入った人だけが許されているようです。

どんな人が入っているのかなと見渡すと、地元の人が中心なのですが、結構観光客も多く来ているようです。みんなで和気藹々としているその様は、何だかとても良い雰囲気です。
あまり混雑を意に介していないようで、「良いお湯だなぁ!」「広島から来たんよ!」などと、賑やかな会話が交わされています。
何だろう、あまりに混みすぎで、正直少し残念な感じがしますが、このみんなで賑やかに入るスタイルは、忘れていた何かを思い出させるような、ノスタルジーを感じます。
もしかしたら昔東京に沢山あった銭湯でもこんな風景が見られたのかなぁ・・・?

浴後、浴室から出ると、番台のオバチャンが「2階に休憩所があるから休んでいってね!」と声を掛けて下さいました。
まるで洋館のような造りをした階段を登っていくと・・・まさに、洋館のような休憩所がありました。
アフタヌーンティーを楽しむには良さそうな、オシャレな造りをしています。
そのさらに上、3階は、ベランダがありました。ココもまるでオープンテラスのような洋風の造りをしています。
コーヒーがサービスで置かれていたので、1杯頂きました。空がぼんやりと白み始めており、忙しい朝の始まりを予感させられます。
うーん、何だか優雅な気分です。さっきまでの芋洗いとはまるで別世界!

慌しいけど和気藹々とした浴室と、共同浴場にあるまじきウェスタンアンティークな建物。訪れた時間が朝早かったので、まだ寝ぼけているのかと思ってしまうような、不思議な空間がそこにありました。

ただ、やっぱり、混雑し過ぎなのはちょっとなぁ。
私が訪れたのは朝早かったから良いですが、遅い時間の、劣化しまくりのお湯だと、正直、印象も変わっていた事でしょう。
訪れる際は、平日や、早朝など、時間を選んで行った方が良いと思いました。
個人的に、とても印象に残った、面白い一湯でした。

2008-10/12

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