大分県

福元屋 (壁湯温泉) ★5.1

単純温泉
(壁湯温泉) 37.8度 / ph7.3 / S63.7.4
Na+ = 53.4 / K+ = 4.5 / Mg++ = 1.5 / Ca++ = 8.8
Cl- = 76.3 / SO4– = 7.8 / HCO3- = 53.8 / CO3– = 3.6
H2SiO3 = 74.4 / CO2 = 8.5 / 成分総計 = 294mg

大分県玖珠郡九重町大字町田62-1
0973-78-8754
混浴露天 ・ 女性専用内湯 ・ 貸切内湯×2
300円
7:00 – 21:00

国道387号線沿いにポツンとある壁湯温泉、福元屋さんはそこに一軒だけあるお宿です。
国道沿いだけあり、ひっきりなしに車が走っていますが、お宿は道路から少し下った所にありますので、秘湯らしい雰囲気は残っています。
玄関先に「日本秘湯を守る会」の提灯がぶら下がっていました。東北や関東でよく見かけるこの提灯、九州ではあまり多く無いので、ちょっと珍しい物を見た気分です。

お宿内部は黒川調とでも言うのでしょうか。なかなか落ち着く造りですが、どことなくチェーン店系の居酒屋にいるような気分もしますが、妙に落ち着くことが出来ます。
ちなみに今回はお泊り。しかもなんと、私と紅鮭の結婚を祝福してくれる友人からのご招待なのです。大感激!
通されたお部屋は、なかなかお洒落で女性にもウケが良さそうな、黒川調の小洒落た素敵な造り。女将さんが黒豆とお茶でお出迎えして下さいました。
これが普通の対応なのかも知れませんが、安宿ばかり泊まり歩いている私にとっては、かえって恐縮してしまうくらいの見事なサービスです。
しかしまぁ、あくまで目的はお湯!って事で、お茶を頂いたら、早々にお風呂を目指す御一行様なのでした。
なんというか、まぁ、「良い宿なんだから取りあえずオチツケ!」と、自分自身にツッコミ入れたくなりますね。

さて、お風呂。お宿には母屋側と離れの貸切風呂と、女性用岩風呂、混浴岩風呂があります。
まず最初に向かったのは、混浴岩風呂。なんと、足元自噴なのですね。
お宿で履物を借りて、すぐの所にあります。手前に女性用の岩風呂湯小屋があり、その奥が混浴。川沿いの素敵なロケーションにあり、洞窟と言う名前が相応しい造りをしていました。

まずはお湯。無色透明で、僅かに湯花が舞っていますが、薄暗くて色までは分かりません。
温めで、37~38度くらいでしょうか。いつまでもゆっくり入っていられる事が出来ますが、お湯からあがると、季節的にもちょっと肌寒く感じてしまう程度です。
肌触りがツルツルする心地が良いもので、暫くじっとしていると、体中に細かい気泡が付着します。前述の通り足元自噴のお湯で、鮮度は申し分なく抜群。
お湯の臭いは、僅かに硫黄臭と、芒硝臭のような温泉臭が漂うものです。強烈な個性はありませんが、こっそりと自己主張しているようで、なんだかとても良い感じです。
このお湯だったら毎日利用しても飽きが来ることは無いでしょう。

特筆すべきは、湯量の豊富さです。湯底は結構深く、足元は岩になっています。
ごく稀に気泡が上がって来ます。湯底全体から沸いているようで、探してみましたが「ココから沸いている!」と、はっきり実感出来る場所がどこだか分かりません。
掛け流しポイントは一箇所のみですが、物凄い勢いでお湯が捨てられており、まるで川のようになっています。ケロリン桶にすると、毎秒2杯程度のお湯があるのではないでしょうか。
色々と足元自噴泉に入ってきましたが、これほどの湯量はちょっと記憶にありません。

さらに素晴らしいのが、岩風呂の風情。巨大地震が来たら生き埋めになってしまうのではないかと言う不安はありますが、洞窟がスッポリと包んでくれる形で、妙に落ち着きます。
岩には蔦や草が絡み、一層良い雰囲気になっています。すぐそばを流れる川のせせらぎに耳を傾けながら入っていると、時間が経つのを忘れてしまいます。
お湯が温くてずっと入ったままでいられる事で、この岩風呂の価値もさらに高められている印象です。
温いお湯に、ながい事プカプカ体を浮かせながら、まったりしたひと時を過ごす事が出来ました。時間を忘れてしまいそうな素敵な空間です!

お宿には他にもお風呂がありますが、混浴岩風呂がメインと言って過言ではありません。
ただ、折角なので、簡単にレポートします。

今回は特別に女性用の岩風呂にも入る事が出来ました。こちらも足元自噴です。脱衣所の建物の先がそのまま岩風呂になっているような造りです。
なんというか、お湯だけで言えば、悪くはありません。泉質的な違いは混浴と変わりなく、湯量も豊富。
トータルの湯量で話をすれば、混浴側に劣りますが、湯船の大きさと湯量で比較した場合、こちらの方が贅沢な湯使いです。
ただ、完全密室で、言葉通りの洞窟。閉鎖的過ぎてちょっと落ち着きません。
ここに一人で長時間入ることが出来る女性がいたとしたら、かなり度胸の据わった方だと思います。
実際、やはり落ち着かないのか、この岩風呂を利用されている女性はあまりいませんでした。
殆どの方は、混浴岩風呂をバスタオル巻きで利用する為の「脱衣所」として利用している様子でした。

続いて、母屋側の貸切風呂。旅館フロントのすぐそばにあります。ちょっと意外な感じがする場所で、最初気がつきませんでした。
浴室に入ってみると、脱衣所側から奥へ行くに連れて天井が低くなる造りをしており、とても圧迫感があります。一番奥は身長180cmの私では立っていられないほどです。
浴室中央に湯船がひとつあり、右手側に一人用の洗い場があります。
お湯は加熱された物で、成分表上では、洞窟風呂のものと同じです。掛け流されており、肌触りがツルツルする物ですが、残念ながらお湯がジャグジーされていて落ち着きません。
髪の毛を洗うには重宝するお風呂ですが、温泉を楽しむと言う点においては、あまり適していないような印象です。幸いな事に、塩素臭はしませんでした。
ちなみに、このジャグジー、オンオフ出来たみたいです。気がつきませんでした・・・
ジャグジーが無ければもう少しゆっくり出来たんですけどねぇ・・・

続いて、離れにある貸し切り風呂。福元屋さんを一旦出て、共同浴場へ行く途中にあります。
一見すると、「あれ?こんな所にお風呂がある、これが共同浴場なのかな?」って感じがしないでもありません。福元屋に宿泊している人のみが利用でき、鍵を借りて中に入ります。
内部は内湯がひとつあるだけ。貸し切りなので、男女の別はありません。
母屋の貸切よりも広々とした造りで、天井も普通の高さで、狭さは感じません。
舞台湯になった岩風呂風の湯船と、洗い場がありました。こちらに張られたお湯も沸かしの物です。
ざぶんと身を沈めると、ザバーっと豪快にお湯が溢れ、気持ちが良いです。
塩素臭がせず、ちゃんと掛け流されているので、悪い印象はありませんが、足元自噴のインパクトが強すぎるので、オマケみたいな存在です。
シャンプーなどの備え付けがちゃんとあるので、「お風呂」として使う分には使い勝手が良いですね。
こちらもジャグジーのオンオフが出来る造りになっていました。私は勿論、オフにして楽しみました。

素晴らしい足元自噴のお宿。大変に気に入ったのですが、実は、それ以外にももうひとつ感激した物があります。それは、「ご飯」なのです。
食事は、1階の食堂で他のお客さんも一緒に頂きます。食堂も民芸調。広々としていて寛げるものですが、なんとなく雰囲気の良い居酒屋と言う雰囲気が抜けません。
お料理は地の物を中心とした物で、一品一品丁寧に作られており、なかなか美味しいです。
素泊まりでカップ麺が評価基準の私からすると、とんでもなく贅沢な夕食です。でもまあ、それはそれ。感激したのは珍しく食べたマトモな旅館食ではなく、ご飯、つまり、お米なのですね。

こう言う所って、散々「おかず」を食わせ、お酒を飲ませた上で、最後になって、さも当たり前のようなツラしてご飯と味噌汁が出てきますよね。私からすると、
「え~、今更出!?」「もう食えないよ!」ってなる訳です。
福元屋でも他所と同じく、胃袋のタイミングを完璧に外してご飯がやってきました。
まぁ、折角だから、箸くらいはつけるかと、一口食べてみたところ・・・美味い!

自家農家で収穫したと言う、香り米を使ったもので、お米の香りが素晴らしく、炊き加減も絶妙!すんごく美味しいんです!
あんまりグルメでは無い私ですが、日本人として生まれた以上、米の美味いマズイくらいは何となく分かります。ココのお米は、本当に美味いんです。
満腹だった事など忘れ、貪りつくようにバクバク食べる私。ふと卓上を見ると、オカズとなる食材は綺麗サッパリ食べ尽くしてしまっています。でも、このお米を食いたい。。。
ふと見ると、たまり醤油があるではありませんか。試しにご飯に掛けて食べてみる。なんとこれがまた絶品!
我ながら浅ましい食べ方なのかと、少し後ろめたさを感じながら、箸の勢いは止まる事を知らず、気が付いたら大盛りで3杯平らげてしまっていました。

翌朝も同じご飯が出てきた訳で・・・
朝からお櫃お代わり。醤油ぶっかけご飯を頂いてしまいました。
スミマセン、余りにご飯が美味しかったもので、色々と出たと思われるお料理の数々を殆ど覚えていないのです。美味しかったような記憶はあるのですが・・・^^;

雰囲気80点、お湯100点、ご飯120点。3教科の合計で変則的に300点満点の素晴らしいお宿です!
ココには再訪したくなりました。というか、絶対に再訪します。その為に、「日本秘湯を守る会」のスタンプを集め始めてしまいました。この会、あんまり好きじゃ無かったんですけどね。
福元屋さんのお米とお湯の良さに脱帽です。

立ち寄りでも良いですが、是非、宿泊してご飯を堪能して欲しい、素晴らしいところです。
こんな素晴らしい所に招待してくれた友人に大感謝!
一生の思い出に残るであろう、素晴らしい一杯・・・じゃなくて、一湯になりました。

2007-10/5

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