酸性 含硫黄-カルシウム・硫酸塩・塩化物温泉
(鹿の湯・行人の湯 混合源泉)
68.4度 / ph2.5 / 自然湧出 / H15.12.12
Na+ = 39.2 / K+ = 19.6 / Mg++ = 16.8 / Ca++ = 70.1
Al– = 7.6 / Cl- = 79.9 / HSO4- = 42.4 / SO4- = 398.2
H2SiO3 = 338.3 / H2S = 28.8 / 成分総計 = 1040mg
栃木県那須郡那須町湯本
男女別 内湯
無料 (関係者以外使用禁止)
那須湯本には、共同浴場が3箇所あります。
一つは、言わずと知れた、「共同浴場鹿の湯」。那須を代表する温泉施設であり、数多くの旅行雑誌等で紹介される、とても有名な所です。
しかし、「じゃあ、残りの2箇所は?」と聞かれると、鹿の湯を頻繁に利用する人でも、意外と答えられない人が結構いるのでははないでしょうか?
答えは、「滝の湯」と「河原の湯」です。ここは言葉通りの「共同浴場」で、主に地元の人たちと、その関係者のみが、鍵を使って中に入り、無料で利用出来る所です。
同じ共同浴場でも、先客万来な草津や、料金を払えば誰でも利用出来る「鹿の湯」とは根本的に違う、とても敷居の高いところです。
しかし、「観光客は地元住人と仲良くならなければ入れないの?」と言うと、そんな事は無く、那須湯本の民宿に宿泊をすれば、鍵を借りる事が出来ます。
宿に滞在中は、その宿にとっての「関係者」という理屈ですね。
また、この辺りの民宿には、宿に内湯を引いていない所も多く、「お風呂は外で」という、通い湯の風習がそのまま残っているとも言えます。
かくいう私も、那須には親戚や友人がいない為、民宿に宿泊をして鍵を借りました。
河原の湯 ★4.5
まず最初に入ったのは、「河原の湯」
普通に那須湯本をふらふら歩いていたのでは、なかなか見つける事が出来ない、ちょと奥まった所にあります。
一番分かりやすい行き方は、「共同浴場鹿の湯」から民宿街を下り、300メートル程行った左手。
とても地味な外見なので、ウッカリすると通り過ぎてしまいそうです。
早速、民宿で借りた鍵を使って中に入る。
ちなみにこの鍵、以前までは温泉成分で真っ黒に錆びた、年季を感じる鍵だったそうですが、今では右写真のような、非接触型の電子キーになっています。
扉脇にあるセンサーに鍵をかざすと、自動でロックは外れます。
共同浴場の造りそのものはとても古いので、妙な違和感を覚える。
木の札みたいなのが鍵になっていると、風情あって楽しい、とか、勝手な事を思うのですが・・・
地元の人にとっては日常的に使うお風呂。風情よりも実用重視なんでしょうね。
これならば出入りが楽だし、部外者が合鍵を作る事を防ぐ事が出来そうです。
(機械が硫化水素で壊れないか心配ですが・・・)
中に入ると、脱衣所に湯上りのオジサンが一人。私の事を見て、「こんばんわ」と声を掛けてくれました。私も「お邪魔します」と返事をする。
浴衣を脱いで脱衣棚に放り込み、入浴の準備をしていると、そのオジサン、「ごゆっくりどうぞ」と言って出て行く。私は「おやすみなさい」と言って、オジサンを見送った。
どうやら地元の人っぽいです。別に挨拶以上の会話をした訳ではありませんが、「隣にいてもお互い無口」な、都会的な冷たさの無い、ほんわかとした挨拶が妙に心地よい。
さて、浴槽ですが、檜造りの湯船が2つある、いかにも那須湯本の湯治場といった感じの、とても風情があるものです。
手前が41度前後のぬるめのお湯で、真っ白に濁っています。
奥の湯船は43度で僅かに熱め。熱くてお湯の劣化が少ない分、白濁の度合いは手前のものに比べると薄いです。
どちらも硫黄臭プンプンの良いお湯です。
源泉は「行人の湯」です。共同浴場の「鹿の湯」や、雲海閣、新小松屋などの内湯は、「行人の湯」と「鹿の湯」の源泉を混合しているのですが、ここでは「行人の湯」のみを味わう事が出来ます。
とは言え、2つの源泉の湧出場所も数メートルしか離れていないそうですし、違いは殆ど分からず、とにかく「濃くて良いお湯!」でした。
滝の湯 ★4.0
次に、宿へ帰る道すがら、共同浴場「滝の湯」に立ち寄る。
こちらも、民宿街の真中にあり、あまり観光客が通るような所では無いのですが、とても立派な湯屋建築で、目の前を通れば気が付くと思います。
こちらも河原の湯と同じ鍵を使って入ります。
河原の湯に比べて建物が立派なせいか、滝の湯の方が多くの人が出入りしていました。
脱衣所は河原の湯よりも一回り大きな造りをしており、トイレもあります。
浴室には、河原の湯と同じく2つの浴槽があり、手前が温め、奥が熱めです。白濁の度合いも河原の湯と同じで、温い方が真っ白で、熱い方は薄白く濁っています。
浴槽そのものの大きさは河原の湯と変わらないのですが、洗い場の面積が広く、浴室全体が広々としています。
さて、肝心のお湯ですが、湯口が2本あり、片方からは熱いお湯、もう片方からは温いお湯が注がれています。
口に含んでみると、どちらも僅かな酸味と苦味を感じる温泉。
後から聞いた話だと、温い方は一度貯水タンクに溜め置きをし、温度を下げてから掛け流しているそうです。
脱衣所の効能書きには、源泉が「行人の湯」とありますが、直前に入った河原の湯と比べると、かなり薄く感じます。
硫黄臭も若干少なめで、加水されているかのような力の無さ。この日だけたまたまなのか、もしくは、貯水タンクで冷やした事による弊害なのか・・・
別源泉を利用しているのでは無いかと疑いたくなる程です。
(新小松屋の主人曰く、「滝の湯」源泉だそうですが、浴場に張られた成分表にはしっかりと「行人の湯」と書かれていました。真相やいかに!?)
それでも良いお湯には違い無いのですが、那須湯本は他が良すぎるだけに、ちょっと見劣りしてしまいました。
ところでここ、カランなどは無く、その代わりに体を洗うためと思われる上がり湯があります。
この上がり湯、浴槽には注がれる事が無く、洗い場の床に掛け流されているのですが、熱湯とぬる湯をミックスする過程がカラクリ仕掛けのようで面白い。
こちらは浴槽に注がれているお湯に比べると、随分とぬるいお湯です。
口に含むと・・・矢張り薄い。
苦味も酸味も僅かに感じる程度で、ある意味、「飲むに適したお湯」です。
(那須湯本のお湯は酸性値が強く、とても濃いので、基本的には飲泉不可です。飲みたい方は、自己責任でどうぞ。)
滝の湯と河原の湯。
お湯の質だけを比較すると、どうしても河原の湯を支持したくなるのですが、基本的にはどちらもとても良いお風呂です。
ガツンと効能を感じる河原の湯と、湯上りサッパリ、肌にも優しそうな滝の湯。民宿に宿泊しなければ入れない、とても貴重な入浴施設です。
もし那須湯本の民宿に泊まる機会があれば、是非とも両方とも入ってみる事を強くオススメします。
2005-4/9
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