最終入湯日 : 2005-5/1
硫黄泉
青森県下北郡大畑町字正津川
無料
24時間
恐山菩提寺から僅か500メートル程離れた県道4号線沿いに、湯坂地区とか、湯坂温泉と呼ばれる一角があります。
至る所からお湯が湧き出る荒地で、周辺は強烈な硫黄臭で充満しています。
ここにある建物は、民宿「石楠花荘」のただ一軒のみ。寂しそうにポツンと佇んでいます。
石楠花荘の裏手には、小川が流れています。残念ながらお湯ではありませんが、湧き出た温泉がそのまま川に流れ込む為、析出した硫黄分が砂利にへばりつき、全体が黄色く変色していました。
さて、私がここに来た理由は、ズバリ、野湯です。
2003年から温泉入浴数のカウントを始め、既に200箇所近く入ってきた私ですが、未だかつて、野湯というのを経験したことがありません。
大自然の中で入る、人の手が加わっていない、ありのままの温泉。さぞかし気持ちが良いのだろうと、常々憧れていました。
湯坂温泉では、山の中に分け入らなくても野湯が出来るという話を聞きつけ、恐山の帰り際に立ち寄りました。
さて、車を降り、下調べした情報を元に、入 浴出来るポイントを探します。
話によると、県道のすぐ脇に、すり鉢状の大きな湯溜まりがあり、そこで入浴出来る筈なのですが、探してみても、どうしても見つかりません。
「もしかして、ここがそうだったのかな?」と思わせるような個所はあるのですが、砂で埋まっており、僅かにお湯が湧き出ている程度です。とても入ることは出来ません。
仕方が無いので、硫黄成分で黄色く変色した川を遡り、入浴出来るポイントが無いか探す。
途中、石楠花荘へ配湯されている源泉池がありました。とても濃そうな硫黄泉で、湯量豊富。
パイプで石楠花荘まで一直線に引湯されています。
当然、入らないで、見るだけで通り過ぎましたが、まだ見ぬ野湯に期待が膨らみます。
暫く歩くと、そのまま川に繋がっている湯溜まりを見つけました。
そこだけ一際白く濁っており、ボコボコとお湯が噴出しています。
深さは分かりませんが、大きさはちょうど一人入れる程度。
「ココなら大丈夫なんじゃないかな?」と思って温度を測ったら、35度でした。
この湯溜まりに入ろうと決めた私。しかし、近くに家族連れがいて、入ろうにもなかなか入れません。
居なくなるまで時間を潰そうと思い、湯船の写真を撮っていたところ、岩だと思って飛び乗った所が泥の堆積で、ツルリと滑り、すっ転んでしまいました。
持っていたカメラのレンズ前玉に小さなヒビが入り、ズボンはドロドロ状態。
「ま、こんな事もあるさ。」と、損害に対してはショックを受けませんでしたが、気分が少し凹む。
暫くすると、さっきまで付近をウロウロしていた家族連れが居なくなったので、汚れてしまった服を脱ぎ、いよいよ入浴する事にしました。
お湯は灰色に濁っており、底がどれくらい深 いのか、また、底に何があるのか全く分かりません。
足場が悪い為、壁にしがみ付いてへっぴり腰になりながら、恐る恐る、ゆっくりと足先を湯に入れていきます。こんなに緊張し、不安を感じる入浴は、生まれて初めての経験です。
最終的に、湯溜まりの深さはおよそ50-60cmでした。寝湯のように体を横に倒せば、十分に肩まで浸かる事が出来る程度のものでした。
湯底には、枯れた雑草のようなものと、大量の泥と湯花が堆積しており、ちょっと気持ち悪いのが難点。
お湯は、かなり濃い硫黄泉です。私が入ったことにより、底に溜まっていた泥と湯花が一気に舞い上がり、一瞬で灰色に濁りました。
あまり綺麗な状態ではなかった為、味覚の確認はしていません。
ちょうど肩の所に源泉口があり、凄い勢いでガスとお湯がボコボコ噴出しています。
源泉の力強いバイブレーションが体全体に響き渡る天然ジャグジーで、とても居心地が良い。
水面付近は物凄く強烈な臭気に包まれていました。
暫くゆっくり入って居たかったのですが、隣で彼女が待っており、寒そうにしながらまだー?」と言っていたので、記念撮影をしてから、早々にあがりました。
そもそも、硫化水素ガスが濃厚で、吸い過ぎると中毒死する可能性もあるので、長湯は禁物です。
しかし、35度という温いお湯だったにも関わらず、温泉成分が成せる業か、湯上り後、暫くの間はずっと体かポカポカしていました。
野湯をしてみて、幾つか分かった事。
一言で言って、かなり面倒です。足場の悪い湯溜りの中に入るのは一苦労です。
当然、裸で入るので、砂利等で体を引っ掻くと痛いです。
次に、決して清潔ではありません。砂や泥で、かえって体中が汚れました。
お湯に入ってゆっくりと寛ぎたければ、お金を払ってでもちゃんとした湯船がある所で入浴をした方が、何十倍も快適だと思います。
湯坂温泉の場合だと、石楠花荘でも日帰り入浴を受け付けているので、そこへ行くと良いでしょう。
ただ、源泉位置至近で入浴出来る喜びや、「こんなアホな所で入浴してやったぞー!」という、ネタ的な楽しさは、普通の施設に無いものがあります。
また、自然と直に触れ合う事が出来たような、一種の感動もありました。
誰にでもオススメ出来るモノとは違いますが、興味があれば、一度は体験してみると良いと思います。
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