青森県

あすなろ荘 (薬研温泉) ★4.0

最終入湯日 : 2009-7/18

単純温泉
(薬研1号,2号混合泉)

青森県むつ市大畑町薬研2-10
0175-34-3951
男女別内湯
400円

下北半島で有名な観光名所、恐山から車で15分くらいの場所にある、薬研温泉。
温泉マニアの間では、かっぱの湯シリーズが有名で、訪れた事は無くても聞いた事がある人は多いのでは無いでしょうか。
泉質は芒硝泉で、無色透明ながら、気持ちの良いお湯が沸いています。私も以前かっぱの湯に入りました。
でも、その当時の私は、芒硝泉の魅力を今ほどに理解しておらず、「ふぅん、芒硝泉かぁ。それにしても矢鱈とビリビリと刺激の強いお湯だなぁ・・・」くらいの印象しかありませんでした。

それから数年後。色々と湯巡りをするうちに、私はすっかり芒硝泉の虜になってしまいました。
硫黄泉も好きだけど・・・ 後味サッパリの芒硝泉って気持ちが良いんですよね!
「あぁ、芒硝泉に入りたい!」そんな事を思う回数も徐々に増え、その都度、頭の片隅に蘇ったのが、この薬研温泉のお湯です。
とは言え、薬研温泉のある下北半島は、青森でも最果ての地です。行きたいと思っても、そうそう行ける場所じゃないわけで、再訪出来た時は感激ひとしおでした。

久しぶりの薬研温泉。これはもう、全部入り尽くしたい!
・・・と、言いたい所ですが、うーん、全部回るにはちょっと時間が足りない。
ココは涙を飲んで一カ所に絞る事にしました。同行してくれた青森の友人がお勧めしてくれたのがここ、あすなろ荘です。
外見は、何だか蕎麦屋だか、今風なラーメン屋?みたいな、一風変わった造りをしています。少なくともここに温泉があるとは信じがたいです。
入口には、「ラーメン」ではなく、「民宿」と書かれた暖簾が下がっていました。
中に入ると、造りは明らかに食堂です。何だか場違いな所に来てしまった感を味わいつつ、恐る恐る「お風呂入れますか?」と聞くと、どうぞとの事です。
浴室は食堂の奥にありました。男女別で、それぞれ内湯があるのみのシンプルな物です。

さて、その浴室。ガラッと開けて、ハッと息を飲みました。
少し草臥れたような、年季を感じるタイル張りの浴室に、タイル張りの小さな湯船がポツンとひとつあります。むき出しのパイプを通して、無色透明のお湯が滔々と注がれて洗い場に流れ去っていました。
採光の良い大きな窓のお陰で、浴室内が明るく色鮮やかに輝いています。
あぁ、素晴らしい! お洒落な高級旅館なんかに行き慣れた人からすると、ゲンナリする光景かも知れませんが、私にとってはストライクゾーンど真ん中です。

早速掛け湯。鮮度抜群のお湯は、ピリっと熱 めです。何度もしっかり掛け湯をして、体を慣らし、湯船に体を沈めました。湯船から盛大に溢れたお湯が、ザバーっと良い音を立てます。
お湯からは強い芒硝臭が香り、肌触りはビリビリと刺すような刺激を感じます。
あぁ、理想的な芒硝泉です。お湯に浸かって、改めて以前訪れた時の薬研温泉の記憶が蘇りました。
記憶の中の思い出は、実際以上に美化される事が多いのです。でも、このお湯に関しては、思い出通りを通り越して、それ以上です。
熱めのお湯と、それに追い打ちを掛ける芒硝の刺激に、体が悲鳴を上げているのが分かります。でもこの悲鳴、私にとっては幸福の悲鳴です。不思議とお湯から出る事が出来ません。

湯口からは、ドバドバと勢い良く源泉が注がれています。成分が析出してガチガチに固まっており、なんとも無愛想。
しかし、私に言わせると、とめどなく幸せが溢れ出る湯口です。思わず見とれてしまいました。

さっきまで、薬研温泉で他にも色々と入ってみたいなんて思っていたのですが・・・
このあすなろ荘のお湯に浸かった後は、不思議と欲も失せて、後ろ髪惹かれる事も無くその場を後にする事が出来ました。

大満足で、夢見心地の一湯でした。

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