長野県

おばあちゃんの元旅館 (?温泉)

ナトリウム-塩化物泉
(共益会12号ボーリング) 93.5度 / ph8.46 / H14.8.6
Na+ = 496.1 / K+ = 52.8 / Ca++ = 67.4 / Cl- = 780.2
F- = 1.7 / Br- = 1.1 / I- = 0.7 / HS- = 1.2
SO4– = 188.4 / HCO3- = 12.6 / CO3- = 26
H2SiO3 = 139.4 / HBO2 = 95 / H2S = 0.1
成分総計 = 1869.4mg

長野県湯田中某所
男女別内湯
料金 寸志
廃業

26日は湯田中温泉の風呂の日と言う事で、普段地元の人しか入れない共同浴場が開放されています。
と、言うことで、開放されているべき共同浴場に来てみたものの、施錠されており、入ることが出来ないではありませんか。
うーん・・・困った。折角来たのだから入りたい。とりあえずどこかで交渉だけでもしてみようと、近くの旅館に聞いてみる事にしました。
それがココ、おばあちゃんの旅館(仮称)です。

玄関をガラガラと開けて、中を見ると、お客さんが帰った後なのでしょうか、シンと静まりかえっており、人の気配がありません。
「ごめんくださーい!」と呼んでみましたが、誰も出てきません。もう一度「こんにちは~!」と呼ぶと、どこからともなく、ちいさな声で「はい」と聞こえました。
で、出てきて呉れるのかと思い待ってみたものの、誰も来ません。
もう一度「すみませ~ん!」と言うと、その小さな声が、「上がってきて下さい」と言うではありませんか。恐る恐る上がると、声の主に、「その左側の扉開けて」と指示されます。
すぐ左手側の襖を開けると、中は畳部屋。しかし、そこには誰も居ません。
今度は、「真ん中の襖を開けて」と、声の主に指示されます。一体何なのでしょうか?
言われるがままに、襖を開けると、そこは寝室で、お婆ちゃんが介護用ベッドに横になっておられました。

「何か御用ですか?具合悪くて起きれないもので・・・」と、お婆ちゃん。
明らかに場違いな所に来てしまった事を悟った私ですが、何でもありませんと帰る訳にもいかず、ありのまま、「共同浴場に入ろうと思ってきたけど、鍵が閉まっていて、開けて貰えるかと思って来たのです。」と言うと、お婆ちゃん、「あの共同浴場はウチとは関係無いのよ。」「ヘルパーさんが1時間くらい前に帰っちゃって、良く分からないの。ごめんね。」と仰います。
私が、「お休みの所をお邪魔してごめんなさい」と言って立ち去ろうとすると、お婆ちゃん、「ウチにも温泉あるから、入っておいで」と言って下さいました。
なんだか申し訳なく感じていたので、一度は断ったのですが、「どうぞどうぞ」「その奥にあるから」と、進められ、折角だからご厚意に甘えようと言う事に。
私が「お幾らですか?」と聞くと、「そんなの要らないわよ」と仰る。「いえいえ、せめて」と言うと、だったら幾らでも良いとの事です。とりあえず一人500円かなと思い、3人分として1500円渡した所、「こんなに要らない!」と言われてしまい、受け取りを拒否されてしまいました。
それではと金額を減らして1000円と言ってみたところ、まだ多いと言われてしまいましたが、なんとか受け取って頂けました。

お風呂は玄関から入って少し奥の所にあります。
男女別で、男湯はなみなみとお湯が張られていますが、女湯側はお湯を張っている最中なのか、寝湯も出来ないくらいに浅く、利用不可。仕方が無いので、男湯側を交代で利用する事にしました。

お風呂はタイル張りで、お宿の規模からすると相応と言う大きさの物です。
タイル張りで、太陽の光が燦々と差し込んでおり、とても神々しいです。
お湯はおそらく湯田中の共有源泉と思われ、他所の共同浴場などで入るものと、あまり大きく感触は違いません。
ほぼ適温のお湯で、お湯から香る温泉臭が何とも心地が良いです。
浴室は若干古く、また、常時営業をしている旅館の基準からすると、少しだけ手入れが行き届いていない感じもしますが、ちゃんと清掃もされています。
今ではこうしてお客さんが入ることも少ないのかも知れませんね。
家族の方たちが利用するお風呂だと考えたら、贅沢すぎる程に立派な物です。
何より、「入っておいで」と言ってくれた、お婆ちゃんの優しさが、お湯を通して身に染み込んでくるような気分です。

ふとしたきっかけでお婆ちゃんにめぐり会え、このお湯に浸かる事が出来たと言う奇跡に、単純なお湯の泉質だけでは足りない、素晴らしい感動と心地よさを感じる事が出来ました。

浴後、お婆ちゃんの部屋に戻り、御礼を言いました。
とても上品で、お優しいお婆ちゃん。昔はこのお宿の女将さんだったのかも知れません。
体を悪くされて、5年前から営業はしていないとの事ですが、たまに来られるお客さんの為に、お湯はいつも張っているのだそうです。

お婆ちゃん、「お茶を入れるから・・・」と仰って下さいましたが、この日は他にも色々と周りたい所もあり、長居は出来なかったので、「また来るからね」と言って、辞退しました。
お婆ちゃん、少し寂しそうにしながらも、「待っているからね」と仰いました。
うーん・・・これは、もう、次回はたっぷり時間を取って、お菓子でも持参して伺うしか無さそうです。
今度いつ時間が取れるかな?今から再会するのが楽しみです。

2008-4/26

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