東京都

第三松の湯 (鵜の木天然温泉) ★4.0

ナトリウム-炭酸水素塩冷鉱泉
(鵜ノ木天然温泉)
18.4 / pH8.2 / 88.9L / 動力揚湯 / H21.6.3
Na+ = 282.7 / Ca++ = 12.1 / Mg++ 4.9 / K+ = 14.1
NH4+ = 2 / Cl- = 15.9 / HCO3– = 824.1 / CO3– = 9.9
H2SiO3 = 73.2 / HBO2 = 3.3 / CO2 = 8.7
成分総量 = 1286mg

東京都大田区鵜の木2-11-11
03-3758-2845
男女別内湯 ・ 源泉水風呂 ・ サウナ
450円だった
2010年2月に廃業しました

都内に数多くある黒湯銭湯。大田区はその黒湯銭湯が特に数多く密集している、温泉地?な訳ですが、あまり足が向かない私。嫌いじゃないのですが、わざわざ行こうとは・・・
そんな訳で、比較的身近な所に住んでいながら、入った事が無い所を多く残したままにしていました。
そんな折、友人からの情報で、鵜の木天然温泉「第三松の湯」が廃業するとの話を聞きました。
廃業となれば、話は別です。いつでも行けると思うから行かなかっただけで、もう行けなくなってしまうと聞くと、行きたくなるのが人情です。
この日は平日で仕事がありましたが、終わってから桜館に立ち寄り、情報をくれた友人と待ち合わせをして現場に向かいました。

さて、その第三松の湯。夜も遅い時間、すっかり暗くなってからの訪問ですが、それでも分かる、風情の良い外観です。
建物の後ろに煙突があり、煙を上げているのが分かります。所謂、昭和レトロな香りが漂う、昔ながらの銭湯です。
銭湯の入り口から漏れる灯りが、あと数日のうちに消えてしまうと思うと、寂しさを感じずにはおれません。
昔ながらの造りで、軒先には下駄箱と傘立てがあります。戸を明けて中に入ると、正面に番台があり、左が男湯、右が女湯に分かれていました。
番台の脇には、待ち合わせが出来る小さな休憩所もあります。古さは否めませんが、必要にして十分な造りをしていました。

番台から続く脱衣所も、古風な造りです。男女の仕切り部分は鏡張りで、見上げる天井はとても高く、一部が剥げ落ちた格子状。
そのまま女湯まで続いているので、実際以上に広々と感じる造りです。

友人が、脱衣所に置かれた「食べ過ぎ注意!」と書かれた体重計を指差して教えてくれました。昔からあるのだそうです。
乗ってみたい気もしましたが、最近私は体重計と意見が合わず、少し距離を置いたお付き合いをしているので、遠慮しておきました。

浴室もいかにも銭湯と言う、レトロな造りをしています。手前に洗い場が縦に並び、奥に湯船がある、オーソドックスな造りです。
お目当ての温泉は、その奥の湯船。左半分は透明な白湯ですが、右側が真っ黒な黒湯になっていました。
さて、その黒湯の印象。少しツルツルする印象で、僅かにモール臭と塩素臭がします。
沸かして循環をしているので、この塩素臭は仕方がありません。思った程強くは無いので、東京の銭湯にしては良い方です。
コーヒーのような黒褐色をしており、透明度は5cmちょっとしょうか。直前に訪れた桜館よりも、気持ち程度薄い気がします。

お湯に浸かりながら見上げた壁面には、見事なペンキ絵。その下にはレトロな看板が並んでいます。ペンキ絵と看板の組み合わせなんて、昔ながらの銭湯ならではです。
見ると、理髪店の看板の電話番号桁数が昔のままです。もう20年近く前に都内の電話番号の桁数がひとつ増えたのですが、それより昔から掲げられている看板と言う事ですね。
看板ひとつからも、このお風呂の歴史を感じる事が出来ます。そして、その歴史が、間もなく終わりを迎える。少し寂しい気持ちになってしまいます。

次に入ったのは、見落としがちな源泉浴槽。脱衣所から入って左手前、脱衣所と洗い場の仕切り部分にあります。
こちらは黒湯の源泉がそのままに掛け流された水風呂になっています。源泉温度は19度しかないとの事で、当然冷たい。
体をソロソロとゆっくり沈めながら入る必要があります。
入った第一印象は、冷たい。でも、ツルっとした肌触りもある、気持ちが良いお湯(水?)です。浴室には白湯から発散される塩素臭が充満していますが、このお湯からはしません。
温度が低いので、お湯からの臭いも弱く感じますが、甘いモール臭を感じます。
湯口は蛇口になっており、これを捻ると、良い勢いで冷たい源泉が投入されます。
鮮度は言うまでも無く良いです。

私は利用しませんでしたが、この第三松の湯にはサウナもあります。
他所であれば、サウナは別料金な事が多いのですが、ここでは特に制限無く利用出来ます。
本来であれば、この源泉風呂はサウナで火照った体を冷やす為の物なのでしょうね。
私は、加温温泉浴槽とこの源泉浴槽を行ったりきたりしながら、心行くまで黒湯を堪能させて頂きました。

今回は廃業するからと言う理由から訪問しましたが、廃業とは関係無く、もっと早くに訪れておくべきでした。都内の温泉銭湯と比較して、お湯の使い方が素晴らしいです。
その上風情も良く、サウナ無料などサービスも良い。温泉マニアに限らず、ここの廃業を惜しむ人は多いのではないでしょうか。
帰り際、番台に座る女将さんとお話をしました。廃業の後は、マンションが建つことになっているのだそうです。
色々とご事情あるようですが、女将さんも矢張り少し寂しそうにされていました。

古き良き銭湯の歴史がまたひとつ幕を閉じました。
残念である事に変わりはありませんが、最後の最後に、この第三松の湯に出会えた事は、私にとっての素晴らしい思い出です。
ここの廃業を知らせてくれた友人と、今までここを守り抜いて来られた女将さん、湯主さんに、ありがとうと言いたい一湯です。

2010-2/15

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