藤三旅 館(鉛温泉)
★★★★
4.5
http://www.ginga.or.jp/~namari-onsen/index.html
最終入湯日 : 2005-4/30
訪れた回数 : 1回

場 所
岩手県花巻市鉛字中平75-1
泉質
アルカリ性単純温泉
風呂の種類
混浴内湯 ・ 男女別内湯、露天
電話
0198-25-2311
料金
入浴 700円   宿泊(自炊部一泊二食) 2980円 〜

  - 鉛温泉 -

宿は、藤三旅館一軒のみ。
宮沢賢治をはじめとする、多くの文人に愛された温泉です。
開湯600年余の歴史を誇り、風情がある白猿の湯が有名です。





「白猿の湯」で有名な、鉛温泉の自炊部に一泊して参りました。
ちなみに、何故藤三旅館だったかと言うと、ネットの「じゃらん」を見ていたら、たまたま安く予約を
取る事が出来たから、です。
一泊二食付きで、ポイント利用後の金額が僅か4800円。万年金欠病のJakeにとって、二食事付きで
この金額は非常に有難いです。
そのうえ、そこが歴史ある温泉旅館、鉛温泉の藤三旅館とあれば、見逃す手はありません。


途中立ち寄り湯等をしながら来たので、藤三旅館には、夕食時間の6時を少し過ぎて到着しました。
到着して予約している旨を伝えると、帳場に通されました。そこで住所や名前を書き、手続きを
行います。帳場は、まるで昔の学校の宿直室のような、およそ宿のフロントとは思えない、
何とも言えない古風な造りをしています。
壁には宿泊者の名前と部屋番号が書かれた木札が掛けられていました。

今回宿泊する事になった「藤三旅館自炊部」は、その名の通り、利用者のメインが自炊湯治に来て
いる人向けの棟屋です。昔から殆ど変わっていないであろうその造りは、一言で言ってしまうと
「古い」のですが、その古さが何とも言えない絶妙な雰囲気を醸し出しています。
これは、実際に行ってみない事には、なかなか説明出来ないのですが、戦時中の学校校舎に
タイムスリップしたようなような雰囲気です。

自炊部の一角には、自炊客用の売店コーナーがあり、お土産や飲み物、カップラーメンと言った物から、
新聞、雑誌。更には、野菜や肉など。挙句の果てには、香取線香やら食器洗剤まで売っています。
「部屋だけ貸すから、後は勝手にやってくれ!」という、自炊精神に則った、とても潔い自炊棟屋です。



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さて、案内された客室は、目の前に豊沢川が 流れる、鍵のかからない小さな部屋です。
自炊部なので、部屋にはあまり期待をしておりませんでしたが、これがなかなか、
古いながらに風情があり、とても落ち着けるお部屋です。
部屋にはテレビと冷蔵庫があり、不便する事も無さそうです。

夕食時間が過ぎていた為、晩御飯は既に部屋に用意されていました。
盛り付けられてから時間の経ったお米と、温くなったお吸い物。冷えた煮魚に地物と
思われる山菜の漬物。
どれも質素で、量も決して多くありません。
もしこれが一泊10000円の旅館で出てきた夕食だとしたら、血相変えて苦情を言いたく
なる所ですが、鄙びた自炊部屋で食べると、何故だかとても有難く、美味しく感じられる
から不思議です。
4800円と言う宿泊料金を考えれば、贅沢過ぎる程の晩御飯でした。

食べ終わった後の食器類は、まとめて廊下に出しておきます。
また、食後の布団も、当然、自分達で敷きます。
所謂、自炊扱いなので、自分の事は全て自分でしなければなりません。
しかし、その不便さが、かえって湯治宿の雰囲気を一層引き立て、新鮮で楽しかったりします。

食後、いよいよ待ちに待ったお風呂です。
藤三旅館と言えば、多くの雑誌で紹介される、125cmの深さを誇る混浴岩風呂、「白猿の湯」が有名です。
ただ、毎日7:30から9:00までの間は、女性専用時間になっており、男性はその間他の浴場を利用
しなければなりません。嬉しそうに白猿の湯に入っていった彼女をヨソに、私は白猿の湯の向かいにある、
露天風呂「桂の湯」を利用しました。

桂の湯は、目の前に豊沢川を望むことが出来る、なかなか景色の良い岩風呂です。
内湯にはカラン数人分があり、湯船は5〜6人程度ゆっくり入れる岩風呂になっています。
無色透明で、44度の熱めなお湯が気持ちよく掛け流されておりました。


露天には湯船が2箇所あります。
一つは、内湯から出たすぐの所にある、内湯と同程度の大きさ
をした岩風呂です。(写真左)
青い照明でライトアップされた豊沢川を見ながら入浴できます。
もう一つは、細い石段を少し降りた所にある、3人入れば窮屈
に感じる程度の小さな岩風呂。(写真右)
40度の温めなお湯が張られています。
こちらの湯船は視線が低いところにある為、豊沢川がすぐ目の
前にあり、とても迫力があります。

お湯はどれも、無色透明の単純温泉です。
あまり個性を感じないものでしたが、惜しげも無く掛け流される
新鮮なお湯は、成分に関係なくとても気持ちが良かったです。



さて、桂の湯から出て、部屋に戻って一息入れていると、「白猿の湯の女性専用時間は終了しました」
という旨の館内放送が自炊棟全体に響き渡りました。
低くて聞き取りにくいオジサンの声で、色気も素っ気も無い、まるで避難訓練時の緊急放送。
細かい事ですが、こういう一つ一つが、湯治目的の自炊棟らしい、不思議な雰囲気を掻き立ててくれます。
「今すぐ行ったら混むかな?」と思い、少し時間を置いてから白猿の湯に向かいました。


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白猿の湯には、廊下に面した入口が二箇所あ ります。
入口の引き戸を開けると、そこは既に浴室内。しかも、湯船はそこから階段を
降りた先にあり、浴室全体を見下ろすようなかたちになります。
今までに無いアプローチで、知らないで入ると、ビックリすると思います。

脱衣所と浴室は一体型で、それぞれの階段を降りた所にあります。
浴室内には小判型をした湯船が大小二つ。
壁には、温泉成分と効能書き、湯治の仕方等が書かれた大きな木の板が
立てかけられています。

よく、雑誌の写真だと綺麗なのに、実際に行ってみて少しガッカリ・・・ という温泉が、残念ながら少なからずあります。
しかし、ここの場合、決してそのような事はありません。
事前に雑誌の写真等で雰囲気は想像出来たにも関わらず、実際に行ってみると予想以上の感動を味わえる、
何とも不思議で強烈な風情があるお風呂です。
そんな、見ているだけでも幸せになれる浴室 ですが、入る事が出来るからもっと
嬉しい。(アタリマエですが。^^;)
早速服を脱ぎ、メインの大きい湯船に桶を突っ込み、掛け湯をする。

お湯は少し熱めで、温度を測ってみると、44.5度。
しかし、熱いのは最初だけで、肩まで浸かってしまえばとても気持ちが良いお湯です。
浴槽は、湯底がとても深い立ち湯で、125cmもあるとの事です。
私は身長が180cmと高いので、普通に立った状態では肩が出てしまうのですが、
浴槽の縁に寄りかかるようにして、ゆっくり浸かることが出来ました。
熱いのは苦手な私ですが、思わず長湯をしてしまいました。

お湯は無色透明の単純温泉です。壁にある効能書きには、「硫化水素臭を有す」
とか書かれていましたが、特にそんな特徴は感じませんでした。
アルカリ性らしく、若干のツルツル感がある程度です。
足元自噴の湯船なので、水面は鏡のように平らで静かなのに、湯船からはお湯が
どんどん溢れ出てきます。
湯口が無い為、浴室内は静寂そのもの。
掛け流しのドボドボという音も悪くないですが、たまには静まり返った所でゆっくり
入るのも良いものです。


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大きな浴槽の脇には、ぱっと見では分からな い位の小さな湯船があります。
こちらは、3人も入れば窮屈さを感じる程度の大きさ。
入ってみると、こちらは温度30度の、非常に温いお湯です。
入った瞬間はとても冷たいのですが、動かずしっとしていると、そのうち
体の芯から熱が伝わってきて、ほんのり暖かくなってきます。

熱いお湯に入りっぱなしではバテてしまうので、44.5度と30度の浴槽を
行ったり来たりしながら、白猿の湯をじっくり堪能させて頂きました。


さて、白猿の湯についてばかり書きましたが、藤三旅館には他にも浴場があります。
その中の幾つかは、旅館部に宿泊している人しか利用出来ない所なのですが、自炊部にある
「河鹿の湯」は誰でも利用出来ます。
寝る前の洗髪をする為に利用させて頂きました。

河鹿の湯は内湯のみで、広めの湯船が一つ と、カランが数人分ある、色気も
素っ気も無い、至って普通のお風呂です。
こちらにも無色透明の単純泉が惜しげも無く掛け流されています。

湯口には飲泉用のコップが置かれており、飲んでみたところ、一言で言うなら
「美味しいお湯」でした。
何とも言えない、爽やかな甘味のある、口当たりが良いとてもまろやかな味です。
冷やして飲んだら、なおさら美味しそうです。
白猿の湯や桂の湯と比べると、地味で、どうしても目立たない河鹿の湯ですが、
これはこれでなかなか良かったです。


(・・・ 以降の私の行動についてですが、既にもう十分長いですが、さらに長くなりそうなので、割愛します。^^;)


結局、白猿の湯には、就寝前にも1回、朝食前にも1回入り、合計3回利用させて頂きました。
前述の通り、自炊部に宿泊した私は、旅館部にあるらしい浴場に入る事が出来なかったのですが、
その事に関しては、全くもって羨ましいという感情が沸いてきません。
「白猿の湯さえあれば他は要らない」と思える程、白猿の湯の風情に惚れ込んでしまいました。

また、これは負け惜しみっぽいですが、旅館部で高い金額を払って普通の旅館風情を楽しむよりも、
自炊部で自炊風情を楽しんだ方が、他所では滅多に味わえない雰囲気を堪能出来て、楽しいのでは
ないかとも思います。

自炊、湯治、鄙び、レトロ、昭和・・・
こんな言葉に思わず反応してしまう温泉マニアな方には、是非とも自炊部での宿泊をオススメしてみます。